八ヶ岳ツアー CRAZY番外 撤退戦線異常なし2
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クレイジー本隊を見送り、ぼおっと過ごすこと数十分。
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時計を見ると六時を過ぎたのでそろそろ動き出すことにする。
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撤退戦開始なのである。目指す目標は『にゅう』だ!!
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06:10 黒百合ヒュッテを出発する。
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そこから中山峠までは森のなかの木道を進む。ドロドロの北八ツではとてもありがたい。
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10分ほど歩いて中山峠に到着。右折したい気持ちをグッとこらえて左折する。
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すこし進んで振り返るとみんなが挑んでいる天狗岳がよく見えた。
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06:35 にゅうへの分岐に到着。
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にゅうへ向けて歩き出す。
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早朝の森の中は静かで寒くて薄暗くて若干心細くなりながらも、
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急ぐ旅でもなし、苔むす森を時々立ち止まりながら、ちんたら歩く。
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ちんたらちんたら歩いていると、前方にガキンとした岩塊が見えた。
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地図で確認するとどうやらあれがにゅうのようだ!
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ちんたらにウキウキが加わって俄然楽しくなってきた。
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07:20 にゅうの直下にいたり、荷物をおいてアタック開始だ。
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にゅうというやわらかな名前のイメージからは程遠いガチガチロックである。
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しかし見た目とは裏腹に登るのはとても容易で左手を使うことなくすんなり登頂できた。
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うりゃあっと三角点を踏みしめて
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ビシィっと山頂写真を熱写し、
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んもうこころゆくまでここにいようと決めて、
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山頂の岩に腰掛けはるか遠くに見えるアルプスの山々を見るともなく眺めていると、
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08:00 ブルルブルルと携帯電話が震えだしたではないか。
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北八ツに入ってからというもの、わがソフ◯ンはほぼ不感地帯であったので全く油断していた。
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見ると隊長からだった。なんじゃろ。
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ロ「もしもーし、今にゅうだけど。」
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隊「つながってよかった。ソ◯バンは山では役立たずだからな!」
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ロ「まあ否定はしないが。で、どしたのさ?」
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隊「ああ、今日俺と高隊長下山することにしたから。高隊長の宿題おわらせんといけんけん。
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だけん、美濃戸口まで迎えに来てよ。わかった?先急ぐけん、あとでな!」
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ロ「え?なに?宿題で下りるってどういこと??」
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隊「だけん携帯つながるとこおれよ~。」プツン、ツーツーツーツーツー
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切れた。言いたいことだけ言って切りやがった。
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まあ理由はともかく、今日美濃戸口まで下りてくることはわかった。
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下りてから何をしてすごそうかと思っていたところだったので、
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目的ができたことはとても喜ばしい限りだ。
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08:15 にゅうをあとにし、麦草峠へ向かうことにする。
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隊長たちが下りてくると言ってもまだまだ先の話だ。
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麦草峠までの長い下り道を、左手に負担をかけないようチンタラチンタラ歩く。
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苔むす森が延々と続き、
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いいなあいいなあ長野ってばいいなあと呟きながら歩いていると目の前に水面が見えた。
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09:20 白樺湖についたようだ。
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そしてそこで、ようやくにゅうがなんなのかを知ることのできる看板に出会った。
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そんな柔らかい感じではなかったけどな!
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白樺湖を過ぎると、人の往来が一層賑やかになり、車の音も聞こえ出した。
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10:00 麦草峠に到着。
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なんとか撤退戦も無事終了。
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おろしたてだった靴も北八ツの苔色に染まっていた。
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さあて、一休みしたらもう一仕事だ。
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なにせ麦草峠じゃ電波届かないからな!
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ラストエピソード「脱落者達」につづく
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2014 年 10 月 28 日