高野毛無山 2019.4 その3
高野毛無山にたどり着いた登山部一行。
藪の中の山頂で
往路の達成感を味わう彼らに
この後待ち受ける過酷な運命など
知る由もなかったのである。
13時20分、昼食を終え、一行は再び歩き出した。
これまでの縦走路の状態から、当初の予定通り進むことは可能であると判断したのだ。
後に彼らの一人はこう語っている。
「来た道を引き返すのが最良の選択肢だった。」
縦走路を北に進み、地図に記載された西に向けて下る分岐を目指す。
「そろそろ左手に分岐があるはず。」
と注意深く登っていくのだがそれらしき道標や痕跡が見当たらない。
見当たらなければ致し方ない。
分岐であるとあたりをつけて西に進路を定め斜面を下ることにする。
幸いにも麓には毛無山牧場があるので針路さえ間違えなければ管理道にたどり着くことができる。
斜面に生える木々を手掛かりに、方向を誤らず谷への誘導を避け、わずかばかりの尾根を下っていく。
時折道のような痕跡を見るのだが、確信を得る前にそれらはいつの間にか林の中に消えていく。
草の生え方や落ち葉の積もり方で多くの場合道を辿ることができる。
それができないとなるとここは人が通らなくなって長い年月が経過しているということだ。
しかし確実に高度は下がっている。
やがて斜面は緩やかになり、14時40分、毛無山牧場の縁にたどり着いた。
真新しい防護柵がなんだか頼もしい。
人工物をみたことにより少し元気になっている自分たちがいた。
では、ここから気を取り直して復路の新たなるスタートとしようではないか!
と意気込んだのもつかの間、確かに地図上の登山道の軌跡をたどっているはずなのだが、まったく道を歩いている気がしない。
道なき道を手探りに進んでいる、
そんな状態なのだ。
生えたい放題のイバラのトゲが、いとも簡単にズボンを穿き痛めつけ、上着の袖をささくれさす。
「まるで川口浩の探検隊だ。」と誰かが漏らした。
そして時折地図にも記されていないような作業道に出会う。
一体どこにつながっているのか皆目検討がつかない道を進むべきなのか、愚直に地図に記された道をたどるのか。
考えながら進むうちに時間は無情に過ぎていく。
16時、これ以上の前進を諦め、進路を西にとり、毛無山牧場の管理道を目指すことにした。
とにかく進むしかない。
笹薮をひたすら西に向かい進む。
やがて小高い丘に登ると、目の先に電柱が見え、建物も見え、道路も見えた。
16時30分、舗装された道路に立つ。
メンバーの顔には疲労もあったが、安堵感がそれを上回っていた。
みんな、いい表情してるぜ、今日一だな!
おしまい
★参加者★
ハルさん
ケンジ
ライダー
ロト
2019 年 6 月 28 日