ツアー&イベント レポート


勇者とカメラマンの近場の旅 鷹取山の巻

隊長の自由帳

むかしむかしのある日、

建者トクサムからカメラマンに一通の手紙が届いた

「久しぶりだねカメラマン。このたび私が考案した新しい建築システムを披露すべく展示会を開催することになりました。

是非会場に遊びに来てください。展示会場は島根県出雲市大社町鷺浦です。

以前は賢者と名乗っていたトクサムだが、どうやら一級建築士になってから建者に改名したらしい。

なるほど。彼の考案したシステムならきっと素晴らしいものに違いない。

ついでに勇者ロトも紹介してあげよう。

という訳で早速展示会場に馬車を走らせた。

待ち合わせは鷺浦公民館。ここに馬車を止めトクサムが来るのを待つ。

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「建者トクサムとはどういう人物なんだ?」と勇者ロトは尋ねた。

「それはそれは物知りなお方ですよ。」カメラマンが答える。

「早く会ってみたいものだ。」

やがて海の方角から声が聞こえてきた。

「はろーみんな!!」

「おおアナタが建者トクサムですか!」 勇者はやや緊張気味だ。

「君が勇者ロトくん? 活躍はカメラマンから聞いてるよ。随分強運なんだってね。」

「いやぁそれほどでもありません。」

「でも魔物を倒すのには運や腕力だけではいかんのだよ。やっぱり魔法も使えなきゃね。」

「確かにそうですが・・。」

「折角出会ったんだから私が魔法を教えてあげよう。」

「本当ですか!!」

「ああ本当だとも。ついてきなさい。」

「展示会場には行かないんですか?」

「はっはっは。後でいいじゃないか。展示会は逃げやせんよ。それよりロトくんの力を上げる方が先決だよ。」

「さすがは建者様!! その通りでございます!!」すっかり建者のしもべと化した勇者ロト。

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「ロトくん。この先にある鷹取山の断崖の先端に魔法草が生えておる。それを食べれば魔法が使えるようになるよ。

「そんな簡単なことで魔法が使えるようになるのですか!!」

「はっはっは。簡単ではないよ。自信があるのならロトくんが先頭で行ってみるかね?」

「楽勝ですよ。任せてください。」

よーし、展示会はほっといて出発だ。

先頭はもちろん勇者ロト。後ろに続くは建者トクサム。最後尾はカメラマン

 

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八千代川の橋を渡り、鷹取山へと向かう勇者ロト。

「ロトくん。まずは登山口を探さないといけないね。君に見つけられるかな?」

「はっはっは。楽勝ですよ。」

「言っておくけどここの登山口は見つけにくいよ。」

「魔物が潜んでいるのですか!!  それは楽しみだ!!」

「そんな事は一言も言っとらんよ・・。」

相変わらずの勇者である。

 

歩いていくと郵便局があった。

「この郵便局を左だな。」

「どうしてそう思うのな?」

「長年の勘ですよ。はっはっは!」

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しばらく進むと建者が言った。

「はーっはっは! こっちは登山口ではないぞロトくん。勘が鈍ったのかなぁ?」

「何ですと!? そ、そんなはずは・・。」

「やはり勘だけではこれから先の冒険は進めんわけだよ。もっと自然の声に耳を傾けないと。そして正しい道を感じ取るんだよ。」

「・・・分かりました建者様。」

建者に諭され、勇者ロトは己の力不足を知ったようだ。

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郵便局を右に進んでいくと、迷路のような路地に入っていった。

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「いいかいロトくん。自然の声を感じるんだ。そうすれば迷うことはないはずだよ。」

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「自然に耳を傾け・・」

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「感じとる・・。」

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「おお!! 登山口に着きました。」

「よしよし。第一の関門は突破だね。よくやったぞロトくん。」

「ありがとうございます建者様。この先も私が先頭で進んでみいいでしょうか?」

「ああ。先頭で行きなさい。ただしこの先も楽ではないぞ。心して進みなさい。」

「はい!!」

勇者ロトを先頭に山道を進んでいく。

道には分岐もあるがもう勇者に迷いはない。既に自然と対話する術を習得したようだ。

「なかなか習得が早いねぇ。」

建者の顔もほころんでいる。

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「へいへいへい!!」

やがていつものように調子付いてきた勇者。

進んでいくと山道に大量の銀杏が落ちていた。

「おお!! これは美味そうだ。食べちゃおう!!」

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落ち立ていた銀杏を手に取り、口に入れようとする勇者。

「食べてはいかんロトくん!!! 」 建者は勇者にとっさに飛び掛って制止したが、ぶつかった弾みで銀杏は建者の口に入ってしまった。

そしてゴクリという音と共に実を飲み込んでしまった建者。

「ぐわ~!!!!!!」

建者はもがき苦しみだした。

「建者様!! どうなされました!!」

「これは毒銀杏。飲み込んでしまったわ・・。このままでは死んでしまう・・。は・・早く魔法で毒を取り去ってくれ・・・・。」

「何ですと・・私が食べようとしたばっかりに・・建者様がこんな目に・・。くそ~う!!  許さんぞ銀杏!!」

勇者に責任の自覚はないようだ。

みるみる顔色が悪くなる建者トクサム。突然髪の毛は伸び、もはや別人になってしまった。

tokusam

「なんと恐ろしい毒なんだ!!」 勇者は恐れおののいた。 「どうしたらいいんだ・・。」

「こうなったら急いで断崖絶壁に向かいましょう。そして魔法草を取り、魔法で毒を消し去るしかありません!!」

カメラマンが丁寧に説明する。

「い・・急いでくれロトくん。あと1時間もすれば・・私の命は尽きてしまう・・・」

「分かりました。必ず取って来ますから!!」

そう言うと建者をこの場に残し

勇者とカメラマンは山の奥へと入っていった。

 

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道ははっきりしているのですぐに目的地にたどり着けそうだ。

「お! ここに美味しそうな実が落ちてるぞ!!」

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「ダメダメ!! 何でも食べてはいけません!!」カメラマンは慌てて制した。

「はっ! そうだった・・。何でも食べてはいけないんだった。私は勇者。食べてはいけない。」

「そう。アナタは勇者。食べてはいけない。食べてはいけない。

繰り返し勇者をなだめすかしながら先を急ぐと、山頂に到着。

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そこには三角点があった。

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「山頂には着いたが・・断崖はどこにあるのだろう?」

「南に進んでみましょう。」

山頂からヤブに分け入ってみるが崖らしき場所は見当たらない。

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「ここではないのか・・。」

「そのようですね。もっと手前から南に進まなければならないようですね。」

「くそう。では戻ろう。急がないと建者様が・・。」

来た道を引き返し、断崖へ続くルートを捜索する。

やがて山道と別れ尾根伝いに進めそうな場所を見つけた。

「この辺りから前方の小ピークに登ってみよう。手がかりがあるかも知れないぞ。」

勇者は小走りで斜面を上がっていく。

「これはなんだ!?」

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小ピークには謎のロープが張り巡らされていた。

「おそらくここが崖の入り口に違いない。」

ロープに沿って進んでいく。

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やがて視界が一気に開けてきた。

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「見つけたぞ!! ここが目的の断崖だ!!」

なかなかの高度感に高所恐怖症の勇者はびびっている。

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「崖の先端にある魔法草をとらねば・・」

滑りやすい足元に気を配りながら慎重に前へと進む勇者。

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=bc-uJs0bDkQ&feature=youtu.be[/youtube]

(手振れ補正あり)

やがて勇者は足を止めた。

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「・・これ以上は私には無理だ。カメラマンあとは頼んだぞ!!」

「えぇぇぇ!!」

あと一歩なのに手柄を譲ってくれる勇者の気配りを恨むカメラマン。

「・・分かりました。では私が行ってみます。」

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=I-JfKZUEmPs[/youtube]

(手振れ補正あり)

 

危うく転落するところだったカメラマン。

「私も無理です・・。」

「魔法草を手に入れなければ建者様が助からないぞ・・いったいどうすればいいんだ。」

2人は頭を抱えてしまった。

しばらく空を見ながら考えてみるがいいアイデアは浮かばない。

勇者がふと時計に目をやると既にタイムリミットは過ぎていた。

「まずい!!  既に小一時間たっているではないか!!」

「なんですと!?」

時間のことを全く忘れていたため慌てふためく2人。

建者様はどうなってしまったのか。

魔法草を諦め、建者のもとに急行する勇者とカメラマン。

 

斜面を駆け下りると看板のある場所に出た。

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なるほど、登山道をここから南に登ればまっすぐ断崖に到着していたわけか。

 

そして建者のもとに到着。

そこには凄まじい形相のトクサムが横たわっていた。

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「建者様!! 大丈夫ですか!!!」

「ロトくん・・遅すぎたようだよ。私はもうだめだ・・。」

「建者様しっかり!!」

「まさかこんな形で最後を迎えるとは・・無念だよ・・・展示会は頼んだよ・・」

建者様!!!

「最後に大事なことを教えよう ・・I am your father ・・。」

「No!!!!!!!!!!!!」

建者トクサムの衝撃の告白に言葉を失う勇者ロト。

そして建者は静かに息を引き取った。

「建者様がmy father とは・・」 勇者は涙した。

 

とんだとばっちりで命を落とした建者トクサム。運だけではいけないと言っていたの余りにも不運な最後を遂げてしまった。

やはり運は大切だとつくづく思いながらトクサムの棺を引きながら下山した勇者。

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「おそるべし銀杏・・。」

海に向かい拾い食いは二度としないと硬く誓った勇者であった。

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「ありがとう建者トクサム!!  いやmy father!! いずれお金を貯めて教会で生き返らせてあげますぞ!!

建者トクサムが生き返るのはいつの日か・・。

 

ちなみに展示会は大混乱のうちに閉会したのは言うまでもない・・。

 

 

 

鷹取山(タカトリヤマ 213.2m)

日御碕の高尾山と鷺浦を結ぶ県道23号線=通称「高尾ゆうゆうライン」の

この場所 ↓ から鷹取山の断崖を見ることができる。

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ちなみにこの道路沿いからの登山ルートはないようだ。

低山ながらそそり立つ断崖はまさに北山のマッターホルン!!

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あの先端に魔法草があるということだが近づくのは危険なので諦めたほうがいいぞ。

 

2011.10.13

~不定期開催 勇者とカメラマンの近場の旅 つづく~

 

 


 

 


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